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【芸工大の日常⑤】全国でも珍しい専門学科、「文化財保存修復学科」を詳しく紹介!

ちーちゃん

こんにちは、東北芸術工科大学のちーちゃんです!

芸工大には、学科とコースを含めて16の分野があります。そのほとんどが新しくデザインやアートを生み出し、「0から1」にする分野です。
しかし、それらの分野とは少し異なる分野が芸工大にはあるんです。

その名も、「文化財保存修復学科」。皆さんは、この学科をご存じでしょうか?

正直私は、芸工大の受験勉強を始めるまで、この学科があることを一切知りませんでした。
でもこの学科は、デザインしたり絵を描いたりすることと同じくらい、またはそれ以上に大切な学科なんです。

しかし、日本はまだ、文化財保存修復の認知度が低いのが現状です…。

ここでは、文化財保存修復学科について詳しく紹介し、芸工大を通じて山形から文化財保存修復の認知をどんどん広げていこうと思います。

それではどうぞ!

こんな方にオススメ
  • 文化財保存修復学科を知らなかった人
  • この学科に興味がある人、入りたいと思っている人
  • 芸工大の学科について知りたい人

文化財保存修復とは?具体例で解説

漢字ばっかりで一見難しそうですが、分かりやすく言うと、「文化財のお医者さん」的役割です。
一般的な医者は、患者のけがや病気を調べてカルテにまとめ、その症状に応じた処置や手術をしますよね?

それと似ていて、ここでは文化財を「患者」として、修復士を「医者」と置き換えます。文化財の状態をチェックし、汚れや損傷などが無いか確認し、カルテに細かくまとめます。その後、状態に応じて綺麗に治していきます。

そこで、修復をする際に大切にしなければいけない主なポイントが、こちら。

  • 「必要最低限の処置」
  • 「後世に長く受け継がれるような処置」
  • 「歴史的価値・文化的価値」
  • 「個性は必要ない」
  • 「作品・作者の意思を尊重する」

ここからは「仏像」を具体例に、あなたは修復士となっている仮定で話していきます。

ほとんどの仏像は、作られてから何十年・何百年と長い時間、人々から拝まれたり大切に扱われてきている、とてもありがたい文化財です。
しかし、仏像によっては、長時間外気にさらされ続けられたりしているものもあります。すると、その仏像は日光や湿気などで徐々に劣化していき、細かい亀裂が出来たり、汚れなどが目立つようになってきてしまいます…。

さて、その仏像を「綺麗にしたい!修復しよう!」となった時、あなたは、その仏像と同じものを新しく作り直しますか?それとも、亀裂や汚れだけを綺麗にしますか?

傷や汚れの程度にもよりますが、前述のように文化財修復では「必要最低限の処置」が大事になってきます。
なので、上記のように細かい亀裂や汚れのみが目立つものだと、全部を作り替える必要はありません。汚れを取り除き、亀裂を埋めるので十分です。

全部作り替えるとなると、その仏像が人々から拝まれたりしてきたという歴史的価値や文化的価値が無くなってしまうんです。それは、文化財の修復であってはならないことです。

「文化財の持っている価値を第一に考えて、後世により長く残していけるように、必要最低限の処置をする」のが文化財の保存修復でとても大事なのです。

また、画家やデザイナーは個性がとても大事ですが、文化財保存修復において修復士の個性は必要ありません。医者一人の個人的な判断で患者を治療するなんて、想像するだけで怖いですよね…。
実際、修復のプロの方々は、一つの損傷について、多くの専門家の意見を交えながら、最も良い処置は何なのかを判断していきます。

修復の悪い例として有名なのが、スペインの絵画と立体彫刻の修復です。詳しくはこちらをご覧ください。

どんなことを勉強しているの?

長い話はここまで!

さて、ここからは文化財保存修復学科で学んでいることをピックアップしてご紹介していきます!大まかに言うと、絵画・立体・保存科学の分野を、講義・演習・実習という形で学んでいきます。

※筆者が今まで学んできたことのみ挙げております。ご了承ください。

まずは講義。

日本美術史」「西洋美術史」などいった美術史から、「古典彫刻論」という仏像の種類や仏教の成り立ちなどを学びました。それに加え、修復についての基礎的な知識や専門用語について「東洋絵画修復論」と「西洋絵画修復論」、「保存科学概論」で勉強しました。

続いて演習。

立体の分野では、ものの見方を養うということで、デッサンと粘土でのサツマイモの模刻(そっくりに作ること)、木材を彫って(注1)蓮弁(れんべん:蓮の花びら)作りをしました。ただ「見る」のではなく、自分で意識し、構造を理解しながら「観る」ことを大切にし、表現技術と美的感覚の向上を目指しました。

最初は厚さ2㎝くらいだったのが……
完成したものは何と厚さ5㎜ほどまで薄くなりました!

西洋絵画の分野では、一からキャンバスを作り、一から絵具を練って、指定されていた絵画の模写を行いました。油彩画や水彩画の他に、絵具に卵黄を混ぜた(注2):「テンペラ画」というあまり聞きなれない画法で絵を描きました。
これらの演習を行う理由は、絵画の様々な技法と構造を理解するためです。
また、実際の作品の状態を調査して、カルテに細かくまとめる授業も行いました。

東洋絵画も西洋絵画の分野と似ていました。掛軸や屏風を中心に構造や技法について学んだり、実際の作品の状態を観察しカルテにまとめました。
また、作品の補強の役割を担う(注3):「裏打ち」といった、修復でとても重要な行程の1つを実際に行いました。さらに、修復に使用するためのを、小麦粉を用いて作りました。

裏打ちに使う和紙に糊を付けて…
持ち上げ…
作品の裏に慎重に張って…
乾燥させるために板に張りました!

(注1):「蓮弁」…蓮の花びらのこと。蓮の花の彫刻は、よく仏像の台座として使われている。

(注2):「テンペラ画」…絵具の中に卵黄を混ぜて描いた絵のこと。経年劣化が少なく色彩の鮮やかさが数百年続く。最後の晩餐などに用いられている。

(注3):「裏打ち」…作品の損傷をふさいだり、補強をする際に行う修復作業。作品の裏に、水と糊を付けた和紙を張りつける。

保存科学の分野では、文化財の損傷の仕組みを理解するために、色々な実験を行いました。
高校の時に学んだ科学がここで活かされました笑 また、自分たちで絵画作品を作り、その作品をレントゲン撮影などのあらゆる撮影を行って、作品の構造について理解を深めました。

銅の析出(茶色の部分)
銀の析出(白い結晶のような部分)
キャンバスのレントゲン写真

最期に実習です。

秋田へ研修旅行に行きました。さまざまな美術館や博物館、お寺を見学し、博物館・美術館の実態や設備的な問題点を学んだり、文化財がどのように保存・管理・展示されているか理解を深めました。お寺では仏像を間近で見学したり時代背景を教えてもらったり、お経を聞いたりしました。
そして、最後に研修のまとめとしてレポートも書きました。

どの授業も、文化財修復にとってとても重要な学びとなりました。

どんなものを修復しているの?

実際の作品の修復活動に携われるようになるのは、3年のゼミ配属が決定してからです。
3年から、「文化財保存修復研究センター」という機関との連携研究が出てきます。

「文化財保存修復研究センター」とは、芸工大の敷地内に建っている全国初の大学付属文化財保存研究センターです。山形の文化財を中心に、東北各地域の文化財を守る中核を担っています。
東日本大震災の後には、津波で多くの文化財が被災し、センターに運び込まれました。

詳しくは、下記のサイトをご覧ください!

文化財保存修復研究センター

仏像・絵画・書物・美術品の修復|文化財保存修復研究センター (iccp.jp)
(公式サイトより)

この学科では、全国からセンターに寄せられる文化財や美術品の修復依頼に、演習を通して携わることが出来るんです。

また、センターとその職員・研究員、文化財保存修復学科の学生が共同して取り組んでいるプロジェクトもあります。その名も「善寳寺(ぜんぽうじ)五百羅漢修復プロジェクト」。
名前の通り、山形県鶴岡市善宝寺に安置されている500以上もの仏像を、約20年かけて修復を完了させる計画です。2015年からの長期間プロジェクトとなっています。

詳しくは、下記のサイトをご覧ください!

三年からのゼミ活動で、より専門的な研究を

三年次から、「東洋絵画修復ゼミ」「西洋絵画修復ゼミ」「立体作品修復ゼミ」「保存科学ゼミ」の4つのゼミに分かれます。一人一人やりたいゼミを決め、より専門性を高めるための研究や調査・修復活動を行います。

四年になると、三年で行った研究や調査を活かして卒業研究を行ったり、その結果を卒業論文で発表します。

学んだ知識は専門職はもちろん、一般企業でも役立つ

文化財保存修復学科で勉強した専門知識は、一般企業でも十分役立ち、活躍することが出来ます。
また、博物館や美術館の学芸員になったり、個人の保存修復工房で働いたり、プロの修復士になることもできますが、これがとっても難しいです。(専門職)

  • 博物館
  • 美術館
  • 文化財センター
  • 修復工房
  • 学芸員 
  • 研究員 など

そのため、もっと経験を積みたいということで、大学院に進学する学生や、海外に留学する学生もいます。(進学・留学)

修復士ではなく、一般企業で自分の知識を活かす学生も多いです。(総合職)

  • 金融
  • 家具
  • 公務員
  • 出版
  • 印刷
  • 新聞
  • 放送
  • 製造
  • サービス
  • 小売 など

文化財保存修復学科に関するSNS

この学科の授業の風景などを載せております。ぜひご覧ください!「シュウフクロー」とは文化財保存修復学科のマスコットキャラクターの名前です。

いかがでしたでしょうか?

以上が学科の紹介でした。文化財保存修復学科の事を少しは知って頂けましたか?また、そこから、たくさんの文化財や修復に興味を持つようになって頂けたら嬉しいです。

新しく物を生み出すのも大切ですが、今ある文化財をより長く受け継がれていくような状態に保つのも、とっても大切だと考えます。この記事を読んで興味を持ち、この学科に受験してみたいと思ってくれた方、筆者が全力で応援しています!

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東北芸術工科大学で主に文化財の勉強をしています。ここでは【山形の美味しい物】や【おすすめスポット】【芸工大の日常】や【山形の文化財】を中心に皆さんに情報を発信していきます。

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